大判例

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福岡高等裁判所 昭和41年(う)286号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕そこで、審按するに、原審において取調べた………を綜合すると、被告人は公訴事実記載の日時、場所において同所に駐車中の田所勇所有の自動三輪車を焼燬しようと考え、同車のボデーの右下部にとりつけてあるガソリンタンク(鉄製)の注油口のねじを開いて、そのタンクに固定してあるビニール製ゲージの下あたりの地上に新聞紙二枚位をまるめておき、所携のマツチでこれに点火したところ、新聞紙が燃え上り、ガソリンタンクの表面に附着していたガソリンに引火し、さらにゲージおよびガソリンタンク内のガソリン(約一〇リツトル)にも引火し、タンク内のガソリンは注油口から二〇ないし二五センチメートルの炎を吹き上げて燃焼し、ゲージは燃え切れて地上に落ちてしまつたが、いちはやく自動三輪車の持主らに発見され、間もなく火は消し止められたため、同三輪車の損傷は右の程度に止まつたことが認められる。以上の事実は原判決の認めるところでもあるが、これによれば被告人は媒介物である新聞紙に点火して前記自動三輪車を焼燬しようと企て、同三輪車にとりつけてあるガソリンタンク内のガソリンおよび同タンクに固定してあるビニールゲージを焼燬したことが明らかである。しかるに、原判決は、ガソリンタンク内のガソリンが燃焼しビニールゲージが燃え落ちただけではいまだ自動三輪車自体が独立燃焼する程度に達したとは認め難く該三輪車を焼燬するに至らなかつたものと解するのが相当であると判示している。その意味するところは必ずしも明らかではないが、要するに原判決は前記ガソリンタンク内のガソリンおよびビニールゲージの焼燬は本件のような刑法第一一〇条第一項の放火罪における目的物の焼燬に当らないというに帰着するもののようである。しかしながら、刑法第一一〇条第一項の放火罪の目的物は建造物、艦船、鉱坑および人の現在する汽車、電車以外の一切の物件を包含し、前記ガソリンタンク内のガソリンおよびビニールゲージそれ自体といえどもその例外ではない。(柳原幸雄・至勢忠一・武智保之助)

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